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079 小山菜乃花

last update Huling Na-update: 2025-08-01 17:00:43

「はい、お茶のおかわり。どうぞ」

「ありがとう……ございます……」

 テーブルにお茶を置き、直希は腰を下ろした。

 菜乃花は告白したことで、かなり動揺しているようだった。

 湯飲みを持つ手が震えている。

 そんな菜乃花に、直希は愛おしさを感じた。そして菜乃花の想いの強さを知った。

 こんな小さな女の子が、勇気を出して自分に告白してくれた。自分には答える責任がある。そう強く思った。

 * * *

「菜乃花ちゃんは……やっぱり強いよ」

「……」

「状況がどうであれ、菜乃花ちゃんは自分の気持ちを伝えてくれた。確かにその……ちょっと驚いたけど、でもすごいと思う。俺にはとても真似出来ない」

「……私は直希さんのこと、ずっと好きでした。これはただの憧れなんかじゃない、これからもずっと、直希さんといたい、そう思ったんです。

 このタイミングで言うのは、ずるいと分かってます。でも……それでも私は、直希さんのことが好き、好きなんです」

「……」

「直希さんのことを考えると、心がどうにかなっちゃいそうなんです。直希さんの声を聞いて、直希さんに触れて、笑顔を向けられて……私にとって、これ以上の幸せはないんです」

「どうして俺のこと、そこまで」

「……私にもよく分かりません。どうしてこんなに直希さんのこと、好きになっちゃったのか……今まで男の人に対して、こんな気持ちになったことはありません。だから男の人とお付き合いすることも、好きになることもないんだろうな、そう思ってましたから」

「俺は」

「直希さん、好き、好きなんです。ずっとずっと直希さんのこと、好きだったんです」

 菜乃花の肩が震

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